会報「あすなろ」2025(令和7年)年3月号「おしゃれ」

人はは誰しも「自分を良く見せたい」という願望を持っています。これは人間に限らず、多くの動物が、自分の種を残していく(異性に関心を持ってもらう)ために、DNAに刻み込まれたパターンの1つです。今の世の中、容姿のことを口に出したりすると、すぐに「セクハラだ」となってしまいますが、なんだかんだ言ったって、芸能人・スポーツ選手に限らず、美人・イケメンは「かわいい」とか「かっこいい」と騒がれるのです。
「人の好みは様々だ」と言いますが、やはりある程度『共通の美意識(万人が美人・イケメンと感じる外見)』というものが存在します。つまりある程度の外見も、好まれる要素としてヒトのDNAに刻み込まれている
のかもしれません。その上で、各自の好み(美女グループでみんなかわいいけど、中でも○○ちゃんが一番、みたいな)が存在しています。
武道に流行廃れはない、と思われがちですが、空手着1つ取ってみても、女性のスカートのように、長くなったり短くなったりしています。今は、長くひらひらした上着が流行っている?ようです。我が國際松濤館空手道連盟では『試合規定』により選手の服装が決められています。まず、白の空手着であること。女性は、中に白無地のTシャツを着用。次が長さの規定。上着の丈は臀部を覆う程度、袖の長さは、手首から前腕の中ほど、ズボンの長さは、踝から脛の中ほどで、まくり上げてはならない。となっています。全国大会で本部は、この服装の規定も守るように各紙部長・審判などに伝えていましたが、当日は決勝に残るような選手もひらひら道着を着ていました。一部の審判員から「あの道着は良いのか?」という意見が出ました。しかし試合規定は「臀部を覆う程度」と非常に曖昧な表現です。生地に関する規定もありませんから「あの道着は違反で失格だ」と言い切れないのです。「試合規定を厳守しろ」という本部は、どんな道着を想定していたのかよく分かりません。ただ人間の感情としては“空手着であっても自分の好みに合う物を着用したい”というのももっともです。
昔、校則が今より厳しく運用されていた頃『制服論争』というものがありました。「制服なんだから、各自の好みを考える必要は無い」という意見と「制服だって、個性を演出するためには、変形したっていいじゃないか」という考え方がメインだったと思います。個人的には、制服はユニフォーム。ユニは「ただ1つ」フォームは「形」、だからそれを変形させる必要は無いと考えています。人生の土台を作る、小学校・中学校、そして高校と、多くの仲間とぶつかり合いながら“見かけで個性を誇示する”などという安直な方法でなく“みんなと同じ格好の中で、本当の自分を探す時期”ていって欲しいと思うのです。小学生のうちから、外見だけ派手な格好をし、「俺はみんなと違うんだ」なんて、チンケな発想しかできない人が増えてきています。本当の自分の価値に気がつかない人は、他人の価値も分からないものです。身勝手な理由で起こる犯罪の増加は、本当に大切なものが分からなくなってきている人の増加と無関係ではない気がします。
幸いうちの道場は、皆と同じ道着を着て、黙々と稽古に励む生徒が、頑張っています。この今の姿を、今後もしっかり応援していきたいと思っています。

 

武道を学ぶ者として…

先月初めに、國際松濤館空手道連盟(SKIF)の全国支部長会議・新年会が栃木県の那須で行われました。当日は大雪の影響で新幹線のダイヤが乱れ、会議の開始時刻が遅れるなど、日程にも大きな影響が出ました。先の全国大会で再会を約束していた、山形支部の支部長さんは新幹線が動かず、急遽不参加。ちょっと寂しい思いをしました。
新年会は和室の会場だったので、各自がスリッパを脱いで会場入りします。新年会が始まる前のスリッパはきれいに並べられていて「さすが、みんな武道家だな」と感心しました。ところがお酒が入って、トイレに発つ人が増えてくると、いくつか(向きを変えず)脱いだままのスリッパが出てきました。かつて私は、道場の入り口の履き物が揃っていないことを注意したことがあります。今はしっかり揃えられていて、見る度、ちょっと良い気持ちになります。そんな私ですから、スリッパが気になり、近くの物は揃えたりしましたが、離れたところの物はそのままにしておきました。しかし、会が終わり出口に行くと、スリッパがきれいに揃っていました。
今回の支部長会議の会場・運営諸々を引き受けてくれたのが、那須塩原の誠道館です。支部長は五関純子さん。全国大会でアナウンスをしていた方で、その時は(張りのある声で、聞きやすくハキハキしていたので)支部長さんだとは思わず「プロの司会者なのだな」と思っていました。各支部長に関しても顔と名前は、何となく分かりますが、どんな仕事をしているかなどは分りません。五関さんについても、何も知らなかったのですが、書道の達人(プロかも…)であることは、現地・お礼の手紙を見て確信しました。とにかく姿勢が良く(私も意識はしていますが…)笑顔を絶やさず、颯爽と歩く姿はとても魅力的です。彼女のその姿を支えている根底には、空手の修行から身に付いてきたもの(自信)があると思います。
彼女を見ていると、同じ武道を学んでいる・伝えている者として“同じ道を目指している”と感じるのです。つまり私がいつも言っているように、目先の試合での勝ち負けだけにこだわらず、人生という舞台での勝ち(自分が一生を終えるとき「良い人生だったな」と思えること)を目指して、日々自分を鍛えていく。それが人生の自信となり、充実した毎日を過ごせる基となるはずです。寒い中、稽古に励む道場生は、強い心を手にすることができると信じていますし、他のSKIFの道場生も同様だと思います。
新年会会場のスリッパも、きっと誠道館のスタッフが揃えてくれたもの、と思えるのです。

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