会報『あすなろ』2013年11月号
支部長の独り言 『促成栽培?――目的は…』

私事で申し訳ありませんが、新支部の責任者となった時に「どうしたら、子どもたちを強くできるだろうか?」と、そればかり考えていたことがあります。うちの道場に空手を習いに来ている子の親は、何を望んでいるのだろうか?中には、うちの道場を辞めて、他の道場に空手を習いに行った子どももいます。空手を辞めるのではなく、道場を変わるというのは、うちの道場に何らかの不満があったということです。当初、そういった人を出さないためにはどうしたらいいのだろうか?と『試合に勝てること』を第一の目標に据え、他の(強いと言わている)道場の稽古を参考にしようか、なども考えていたことがあります。しかし、今では、それは目標の1つではありますが、最大の目標ではありません。
またまた私の仕事のことで恐縮ですが、どの中学校にも、“部活動での活躍で高校への進学”を考えている親がいます。確かにスポーツの能力も1つの才能で、それ自体は悪いことではありません。しかし、高校に行ければいいと、高校進学自体が目標となってしまうことは、決していいことではありません。高校で人生が終わるわけではなく、高校で何を学んだか、何がやれたかで、その後の人生に大きな影響が出てくるのです。少々スポーツが得意だからといって、それで食べていける(職業として)人は、ほとんどいないのです。ですから、高校に在学している間に、どんな人生を送るかを考え、それに向かって努力することが、何より大切なのです。ですから道場に通っている子が、空手の試合で勝つことも大切なことかもしれませんが、それは、努力の結果であって、それ自体が目標であってはならないと思うのです。
例えば、型の試合で勝つには“間の取り方”が最大の要素です。型の試合で上位に進出する選手は、例外なく、間の取り方が同じです。それは、今の試合の審査基準が、本来の型(戦いを想定した演武)ではなく、鑑賞のための演舞としての色合いが濃いからです。ですから、型の試合で上位に残る子でも「基本ができていないな~」と感じる子がいます。こういった子は、小さいうちは入賞したりするだろうけど、おそらく、大きくなってからは伸びないのでは?と思います。試合に勝つために、安直に演舞を目指す人がいてもイイと思いますが、やはりうちの道場では(勝つための方策として試合用の型の指導は行いますが、あくまで普段の稽古で)『力強い型』を目指していきたいと考えています。それは、自分で型を演じてみると分かりますが、例えば突いても、握りを締めない突きでは、気が入らず、満足しません。最終的に「人の評価」で満足するのか「自分の価値基準」で満足するのかの違いだと思っています。そして本当に強くなった人は、型も上手いのです。
人生でも同じだと思いますが、人の評価(目)を気にしていては、大切な物を見失ってしまいます。手前味噌かもしれませんが、大人になって空手を始めた人が、長く続けていける道場って(子どもの塾・習い事感覚の道場と違って)とても素晴らしいものだと思っています。うちの道場の最大の目標は、空手が人生のパートナーの1つ(健康、美容、そして人との出会いの場として…)と感じてもらうことだと思っています。
先月の6日に行われた、県のスポーツ少年団の大会や最近の子どもたちの様子を見て、私は確信しました。今の指導に(大きな)間違いはないと。以前から何度も申し上げているように、武道の素晴らしいところは、運動神経が鈍いといわれている子でも、続ければ必ず上達するということです。うちの道場で、やる気になった子は、確実に強くなっています。うちの道場は促成栽培はしません。
支部長 重田紀元
