会報『あすなろ』2013年12月号

支部長の独り言 『日本の心』

 

1週間の入院生活で、24時間点滴を受けながら、久しぶりに新渡戸稲造(旧5,000円札の肖像画になった人)の『武士道』を読み直しました。何故その本を読みたくなったんだろうか?と考えてみた時に、「最近の日本(日本人)が、失っていってしまったものは何か」を再確認したくなったのだと気がつきました。


つい先日、フィリピンのレイテ島で壊滅的な被害をもたらした台風30号。台風が過ぎ去った後のガレキの山と人々が暴徒と化して、略奪を行っている場面がニュースで流れてきました。フィリピンに限らず、治安が乱れた時、人々が略奪行為に及ぶというのは、世界的にはさほど珍しいことではありません。ところが我が日本では、(東日本大震災の時に)誰もが食料がなくひもじい思いをしている時でも、配給の物資を受け取るのに、きちんと列を作って物資を受け取っていました。この様子が世界中に配信され世界中の人々に日本人の礼儀正しさを印象づけたと言われています。海外旅行をする時、“自分の荷物から目を離してはいけない”というのは、どこの国に行くのにも常識とされています。日本では、いすの上に荷物が置いてあれば、それを見た人は「この席は、誰かが座るんだろう」と、違う席を探してくれます。しかしこの日本の常識は、世界ではまったく通用しないのです。海外でそんなことをしたら、ヨーロッパだろうがアジアだろうが、自分が帰ってきた時には、荷物など(盗まれて)ありはしません。そこには違う人が座っているのが当たり前なのです。この日本人の礼儀正しさ、マナー良さなどは、江戸時代に確立されていった武士道の影響だとされています。

武士道の心は、侍だけでなく、広く一般庶民の心にも根付いていきました。幕末から明治にかけて、たくさんの外国人が訪れましたが、そのほとんどが、日本人は貧しいが、毎日を生き生きと明るく笑顔で過ごしている姿に驚いていました。それが今では、有り余るほどの物質に恵まれながらも、人々は幸せを感じることなく、不平不満を口にしています。

日本人がこのようになってしまった最大の原因は、第2次世界大戦での敗北でした。日本がアメリカと戦わなければならなくなった時、多くのアメリカ人は「この戦争はすぐ終わるだろう」と考えていました。しかし、実際に日本人と戦って、殺されても、殺されても祖国のため、愛する人を守るために向かってくる日本人に、彼らは心底恐怖を感じました。戦争中多くの一般市民を虐殺した彼らは、日本が復興した後、日本人が復讐のために再び自分たちの敵となることを恐れました。そこで、日本を占領していたGHQは“日本は戦争中に悪いことをしました。しかし、本当に悪いのは戦争を指揮した一部軍人で、一般の人々もその被害者である。それを正義の味方のアメリカが救ってくれた”という筋書きを終戦直後から、あらゆるメディアを通し、日本人を洗脳していきました。それは見事に成功し、日本のほとんどの国民は、日本は世界(特にアジアの人々)に対して、悪いことをしてしまった民族だという負い目を感じるようになってしまったのです。自分の国・民族に誇りを持てない人々がその文化を大切にできるはずがありません。

戦後持ち前の勤勉さで復興を遂げた日本は、今、その精神的な支柱のなさに気がつき始めています。どんどんアメリカナイズされ、荒廃していく人の心を立て直していく力を持つもの、それこそが礼儀・忠義を重んじ、他人を思いやる優しさ、正義感、自分を律する力など日本人がかつて持っていた『素晴らしい日本の心』を取り戻していかなければならないのです。小さな町道場でできることは限られています。挨拶、返事、から始まって強い体(真の優しさは、強さの中にしか存在しないと思います)、困難に耐える力を作っていくことは、人生にとって何より素晴らしいものを手に入れられるはずです。
ありがとうございました。

支部長 重田紀元

アーカイブ

Top