会報『あすなろ』2014年11月号

支部長の独り言 『日本の心はどこへ…』

 

現代の日本は、“日常生活の中で命の危険を感じない”数少ない国です。それがいかに素晴らしいことか、私たちはあまり意識することがありません。平和で安全な生活ができることが、当たり前になっていて、そのありがたさが見えないのです。そんな中で、その素晴らしい国の一員であることを意識する時が、オリンピックや世界大会などで選手が優勝し、その栄誉がたたえられた時とか、行事の開会式などでの、国歌斉唱や国旗の掲揚、そして海外を旅行した時などでしょうか?

先日の県民大会での開会式でも、国歌斉唱が行われましたが、そこでちょっとびっくりする出来事がありました。司会者が「会場の皆様方も、起立し国旗に注目して下さい」と言いい終えた後、スマホをいじり始めたのです。国旗を掲揚し国歌を斉唱する時は、どこの国の人でも“気をつけの姿勢”をとるであろうに、我が日本で、しかも武道の大会で、しかも大会の主催者側の人間が…です。おまけに国歌斉唱が終わった時、その司会者のスマホの音が(マイクを通して)会場中に、「ピロロロ~」。会場中の人が、その事実に気づいたのです。何ともやるせない気持ちになりました。そんな人から「武道の精神が、どうのこうの…」と言われても…です。

その開会式の来賓挨拶の中で、鎌形千葉県理事長は「全日本空手道連盟(全空連)は、空手を安全なスポーツとして(パンチが防具に触れば反則)、オリンピックへの競技参加を目指している」と、はっきり今後の全空連の方針を述べました。挨拶の中で「上段回し蹴りはご祝儀ポイントで3ポイントが与えられるので、選手のみなさんどんどん出しましょう」と言っていました。キックボクシングやK1などといった打撃系格闘技の中で、最もKO率の高い技の1つである上段回し蹴りは、防具に触れるだけのご祝儀技へと変わっていたのです。

世界中の人々が、日本の素晴らしい文化(和食が世界遺産になったり、災害時の礼儀正しさが賞賛されたり)に着目し、物欲の追求が真の幸せをもたらさないことに気づき始めているこの時に、肝心の日本人が、日本の素晴らしい文化を忘れてはならないのです。日本で生まれた空手をオリンピックの競技として、世界中の人々に広めたいという気持ちもわからないでもありませんが、広めることの弊害も忘れてはならないのです。

今や世界中のどこででも食べることのできるお寿司ですが、これが寿司?と日本人には想像もつかないモノがTV番組で取り上げられたりします。その土地の人の好みに合わせ変化したお寿司しか知らない現地の人は、本当の寿司の味を知らずに「お寿司とはこんな物か」と思ってしまうのです。日本に来て、お寿司を食べて日本の味の素晴らしさを知る外国人がたくさんいます。海外に広めて、日本の心を誤解されるより、日本に来てもらって、日本の心を知ってもらうべきです。JUDOとなって“日本人ばかりが勝てないようにとルール改正?を繰り返した”柔道のようになってはならないと思うのです。

安く粗悪な商品を世界中に売ることより、高くても所有した人が心底満足できる、心のこもったMADE IN JAPANを作り続けていくべきです。命のやりとりを通して生まれた“互いの人格を尊敬し合う武道の精神”こそが世界中の人々から求められているのです。

支部長 重田紀元

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