会報『あすなろ』2015年5月号

支部長の独り言 『うまさと強さ』

asunaro201505

いつも空手の大会の来賓挨拶で「空手は最強の格闘技だ」という話をされる方がいます。しかし実際に空手を学んだ人で、空手最強論を唱える人は、そう多くないと思います。空手と同じ時間かけて練習したら、キックボクシングの方が、まず間違いなく強くなると思います。それでも空手を習う人がいるのは、物理的な強さ以外に、手に入れたい物が違うから…だと思うのです。もちろん、選手としての寿命を考えると、直接打撃を加え合うキックボクシングの方がはるかに短くなり、長く続けられないなどの理由もあるのでしょうが…。

我が子に空手を始めさせた動機にはいろいろあるでしょうが、“いじめられないために(我が子)に空手を習い(習わせ)たい”という理由は結構多いのではないでしょうか?大人になって習おうと思う理由は、護身、美容と健康などでしょうか?動機はともかく、武道、武道といっても、実際に殺し合いをする訳ではありませんし、怪我もしたく(させたく)ありません。ということで、防具が必須条件となってきます。ただここでも、スポーツと武道の関係が出てきます。一番の違いは学ぶ人の心の持ちようではないでしょうか。美容と健康のためにと思ったらスポーツだし、自分を高めること「いざ鎌倉(万が一の時)」という時(その生涯の中で、一度あるかないかの命をかけた戦いに備えて)を想定して心身を鍛えていれば、武道なんだと思います。

組手の試合を見ていて「この子はうまいな」という子が、何人かいます。関節の柔らかいうちから、その可動域をキープして反復しつつ、神経系を鍛えていけば、素晴らしい蹴りが出せるようになります。過去に何度か取り上げた、全国大会で優勝するようなレベルの少女は、まさにその好例だと思います。今の全空連ルールでは、高校生以下はカデットルールで防具(メンホー)に触ると反則となります。今の空手は、ポイント取りゲームです。いかに速く所定の場所(付近)に、手足(で突く・蹴るでなく)を置けるか、が勝敗を決定するのです。剣道が竹刀道となったとき、触れば切れる日本刀を意識することは、ほとんどなくなりました。これは過去何度も述べてきたように、打撃競技で最も大切で面白い『間合いの駆け引き』という面での緊張感(ある意味の恐怖感)が薄れる、ということです。同じ組手の試合を見ていても「この子は強いな」と感じる子がいます。腕が伸びきった突きでポイントを得ている子と違って、十分な間合いから、相手の防具の直前にコントロールした突きを極める。まさに理想的な『寸止め』ができているのです。当道場でも、レベルが上がってきた生徒は、先輩にこてんぱんにされる(もちろん怪我をしない程度に)ことがあります。親とすると「我が子になんてことをするんだ」という思いを持つこともあると思いますが、組手をやってある程度の恐怖を感じないと、本当の意味での間合いは手に入れられないのです。以前にも述べたことですが、小さなナイフ(でしたが)を向けられた時、恐怖も感じましたが、この相手なら「十分対応できる」というゆとりを持つことができました。日々鍛練を重ね武士の精神を失わず、日々の稽古に打ち込んで行きたいと思います。

支部長 重田紀元

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