会報「あすなろ」2022(令和4年)年2月号「幸せになるために(ほんの少し)」
昔「巨人の星」というアニメが一世を風靡しました。
この後「スポ根(スポーツ根性もの)」というジャンルが定着し、たくさんのスポーツを題材
としたマンガが登場しました。当時は学校の部活指導は“体罰など当たり前”でしたし、スポ
ーツ医学といった考えもありませんでした。日本が豊かになるにつれて、徐々にスポーツに
よる傷害に対する意識も高まっていきました。
今でこそ“熱中症予防のための給水”は当たり前のことですが、当時、真夏の部活では「疲れ
るから、絶対水を飲むな」という声がかけられていました。また、ウサギ跳び(蹲踞の姿勢で
のジャンプ)をよくやっていましたが、今では“膝への負担が大きすぎる”という理由で、全く
やらなくなりました。
当時中学生だった私は、巨人の星の主人公「星飛雄馬」の持つ致命的な欠点『球質の軽さ』
(彼は体が小さかったため、剛速球を投げるのですが、バットに当たるとポーンと球が飛んで
しまう)という『悲劇』を信じ切っていました。同じ野球あるあるで“良いピッチャーの球は、
打者の手元でギューンと伸びる”があります。こういった表現は、今でも野球解説で普通に用
いられています。
高校に入って、物理の授業で「ニュートン力学(慣性の法則、運動方程式、作用反作用の法
則)」を学んだ時のことです。当時の物理の先生は、前記のような野球の俗説を題材として説
明してくれました。投げられたボールは、空気以外に接触するものがありませんから、そのス
ピードや方向を変化させる要素は、重力と空気抵抗しかありません。ですから投手の体重が軽
かろうが重かろうが、投げられた球が重くなったり軽くなったりすることはありません。同様
に投手の手を離れたボールが(ギューンと)加速することは絶対になく、どんな球でも投手の手
を離れてからは遅くなります。ですから、飛雄馬が悩む必要は無かったのです。
科学は万能ではありませんが、いろいろな現象を客観的に解明してくれます。そういう目で見
てみると“内臓脂肪を溶かし、便として排泄するサプリ”という広告が気になりました。消化管は、
養分や水分を吸収するための器官で、排泄の器官ではありません。ですから内臓脂肪が溶かされて
も、血液(リンパ)の中に入り込むだけで、血管から消化管に脂肪が出て行くことはありません。
巷で信じられているいろいろな噂も、ちょっとだけ冷静に考えてみれば惑わされることはないので
すが、実際にはたくさんの人が騙されてしまっています。
騙されても実質的な被害がなければ、笑い話で済むのですが、残念ながら世の中には人を騙して
利益を得る人がいます。先日650億円集めたという「マルチのカリスマ」玉井容疑者が逮捕され話
題になりました。(誰でも、私のようなお金持ちになれるという)セミナーに参加した大学生は「簡
単に大金持ちになった様子を聞かされて、自分も同じように金持ちになれると思った」といって
200万円だまし取られたといいます。利息がほとんどつかない時代に、月利20%などというおい
しい話は、経済的合理性を欠いています。
教員時代に、いつも生徒たちに「もし自分が本当にお金を増やせる方法を見つけて大金持ちにな
ったら」という話をしていました。「次にその方法を教えるのは、家族。その次が親戚、友達。絶対
に赤の他人には教えるはずがない」と。将来どこかで、赤の他人のあなたに「お金を儲けさせてくれ
る」という話を聞いたら、冷静にこの話を思い出して欲しいと…。
令和の時代になっても○○詐欺(オレオレ、還付金…)の被害はいっこうに減らず、一昨年の被害額は
285億円を超えるそうです。ほんの少しだけ、冷静に科学的に物事を判断する習慣が持てるだけで、
これからの人生で“嫌な思いをすること”は減ってくるはずです。

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