会報「あすなろ」2022(令和4年)年11月号「どこを見ていきますか」

野球大好き少年が、一度も甲子園に出場したことのない高校と、甲子園に何度も出場

している高校のどちらを選ぶか?といったら、ほぼ間違いなく、甲子園の常連高を選

ぶと思うのです。例えば、10人に1人野球センスが優れた人がいるとすると150人の

部員がいれば、野球が得意な選手だけで15人のチームを作ることができます。しかし

15人しか部員のいない部であったら、せいぜい1人か2人の(得意な)選手しかいない

ことになります。当然部員がたくさんいるチームの方が勝利の確率が高いということ

になります。進学に関しても、同じような理由から有名校への進学率が高い塾(学校)が

選ばれる傾向があります。塾に限らず、習いごとをする場合も同じかもしれません。

例えば、道場を選ぶ段階で“試合で優勝する選手が多い道場”と“そうでない道場”が選択

できたら、一般には強い道場が選ばれると思います。

ただこの考え方は、視点を変えてみると、ちょっとした問題が見えてきます。それは

上位になれない子たちです。運動センスのある子、勉強のできる子にとって最適な環境は、

そうでない子にとっては、最悪の環境なのかもしれません。野球が好きで入部しても、

ずっと球拾いで、ゲームに参加すらできない。名のある塾に入っても、成績の良い子は

学費が免除され、どんどん実力が上がります。しかし、勉強の苦手な子はネギカモ。

ネギを背負って塾にお金を運んでいくだけの存在になるのです。「鶏口となるとも牛後と

なるなかれ」という言葉があります。実際に「木高も、楽々合格圏内」と言われていたか

つての教え子Aは「僕は木高ではトップになれないけど、袖高ならトップになれる」と

言って、袖高に進学。卒業時には木高生でもなかなか進学できない早稲田大学と筑波大学

の2校に合格しました。大学まで行きたい生徒には「進学するなら、高校ではなく、どの

大学に行けるかで決めろ」と指導していましたが、実際には有名高校を選び、(高校卒業時

に)自分の希望しない大学に進学してしまう生徒の方が多かったのです。

なんだかんだ言っても、人間『目先の結果(利益)』を優先してしまうものです。

毎年道場に何人かの入門者があります。中でも気になるのが、運動が本当に苦手な子です。

そういう子に、いつも“続けて欲しい”と思うのです。残念ながらというか、そんな子の多くが、

数ヶ月で退会してしまう(地味で面白くない基本が続くから?)ことが多いのです。

運動が苦手だからこそ、基本を続ける必要があるのですが…。今現在“気になっている生徒”が

3名います。その子たちは(手前味噌かもしれませんが)、確実に進歩しています。そのことは

指導者にとって何より嬉しいことなのです。時に怒鳴られながらも、とにかく稽古に顔を出し

ています。親御さんに見て欲しいのです。我が子の成長を。まさに『継続は力』です。

確かに進歩の速度は遅いかもしれません。他の子のように、試合で活躍することは少ないかも

しれません。でも何年か先には“自分に自信を持って生きていくだけの力”を持っているはずです。

今のような世の中、空手を学ぶ意義は、まさにそこにあると思っています。

先月号の裏側で「勝つための(姑息な)勝算」について述べましたが、個人的には“どんな試合でも

2回戦を勝てる”レベルの力が付けば『優勝』するチャンスはある、と思っています。勝負は時の

運ですが、勝利の味もまた格別です。とにかく『続けて』欲しいものです。

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