会報「あすなろ」2023(令和5年)年11月号「魔法の杖」

格闘技あるあるで「一番強い格闘技は何?」という質問があります。

空手、総合格闘技、柔道、キックボクシング…、いろいろな競技がありますが、

正解は「一番強い人が強い」となるのです。「なんだそれ」という声が聞こえて

きそうですが、安全面等を一切無視したら技の種類ではなく、勝敗は個人の能力

によって決まる、ということです。わかりやすく言えば、どんなにすごい格闘技

の達人であっても700kgの野生の熊と戦ったら勝負にならないのです。

かつてある流派の空手家が熊と戦い「熊殺しWリー」と話題になったことがあり

ます。戦った?熊は200kgはありそうでしたが、組み合ってもWリーには一切傷

が付かず(5cm以上ものナイフのような爪がない)、牙も抜かれ、熊はじゃれてい

るようでした。もし熊が野生の熊でWリーを獲物として狙ったら、あっという間

にWリーは、この世からいなくなっていたはずです。破壊力(打撃力)は、運動エ

ネルギーとして数値化することができます。つまり“破壊力=1/2×質量×速度の

2乗”つまり大きくて(重くて)、速いものほど、大きな破壊力を持つことになりま

す。ボクシングの階級が細かく17階級にも分かれているのは、それだけ破壊力に

差が出るからです。

先日ある人から「(相手がナイフを持っている、という想定で)遠い間合いから、

確実に突きを決めるには、何の流派を学んだらいいでしょうか?」と問われました。

残念ながら私は他流派の技や、その他の格闘技に詳しくありません。ただ、もしどこ

かにそういった『技』が存在しているとしても、遠い間合いから相手に打撃を与える

距離まで、自分の体を移動させる筋力が必要となります。ですから、その技を会得す

るには、技を覚える稽古とその技を使いこなす体力(筋力)をつける時間が必要となります。

魔法使いハリーポッターを主役とした映画(小説)が、何度もシリーズ化されヒットしま

した。魔法という非現実的な夢物語は、いつの時代も人々の心をつかむようです。

確かに、ドラえもんの歌ではありませんが「あんなこといいな、できたらいいな」は、誰

しもが思ったことがあるはずです。宝くじを買うのも、これに近い感覚なのかもしれませ

ん。もし当たったら、あれを買って、これをやって…、こう考えて買うのですが、まず当

たることはありません。 武道の素晴らしいところは“運動が苦手な人でも(続ければ)、

かなりの『強さ』を手にすることができる”ことですが、残念ながら簡単に身に付く『必殺

技』という魔法の杖は存在しないのです。強くなるには、地道に『基本』(単調な稽古の繰

り返し)を身につけ、少しずつレベルアップするしかないのです。基本は家で例えれば、土

台です。どんなに素敵な家を建ててみても、土台がいい加減ではすぐに壊れてしまいます。

稽古に休まず来ている子は、もちろん空手が好きになっているのでしょうが、新しい型を覚

えたりということにも、喜びを感じているようです。とにかく武道における稽古は、嘘をつ

きません。なるべく多くの道場生が、稽古を続け、強い心と体を手に入れてくれることを望

んでいます。

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