令和5年12月号 うら面「アメリカ的?」
先日、来年度より“介護職員の給与を一月6,000円程度増額する”という
報道がなされた矢先、広島県で「施設職員が90代男性の、ゼリーの誤嚥を
防ぐ義務を怠ったことなどが原因」として裁判所が、介護施設に2,365万円
の支払いを命じる判決を下しました。過去には88歳男性がパンを誤嚥して死
亡、施設側に2,490万円の支払いを命じる判決も出されていたといいます。
このニュースを聞いた時「ますます日本もアメリカ的『訴訟社会』になって
しまった」という思いが強くなりました。“平均寿命を超え、自力で日常生活
ができなくなった(ゼリーですら飲み込めない)人の死”に対して、施設職員の
過失を訴え勝訴し大金を手にした家族以外、この判決を支持する人はほとんど
いないと思われます。
介護の仕事は4Kと言われます。まず「きつい」…要介護者を移動させるため
に体力を使うことが多く、その負担が非常に大きい。「汚い」…おむつ交換や排
泄介助などが重要な仕事で、仕事の特性上仕方がないこととはいえ、他人の排泄
物や嘔吐物などを目にする機会が多く、心理的な抵抗感を感じてしまう。「危険」
…施設を利用している高齢者や障碍者は抵抗力が弱く、ノロウイルスやインフル
エンザなどの集団感染が起きやすい。周囲に感染者が多くいると、当然のことなが
ら自分も感染するリスクが高まる。また、介護の際に転倒や転落などで怪我を負っ
てしまう恐れがある。その上「給料が安い」
今、高齢化社会で要介護人口が増えているのに、介護の仕事をする人がどんどん
減っています。冒頭の賃上げ法案も「焼け石に水」と言われているのに、更に追い
打ちをかけるような裁判所の判決。過失は認定し賠償は命じるが、それを防ぐ方法
(介護者と要介護者が1:1で)は現実として不可能です。同じような訴えが各地で起
こってくれば、介護施設は倒産してしまいます。実際ネット上には、介護施設を訴え
るための無料相談のページも増えているそうです。施設側も食事が困難な入居者には
胃瘻(手術で腹部に小さな穴を開け、チューブを通し直接胃に栄養を注入する医療措置)
を強制するしかありません。施設で働く人も、いつ自分の責任を問われるかもしれない。
これではますます介護職を離れる人が増えてしまいます。
“人は必ず死ぬ”こんな当たり前のことですら、金儲けの対象としていくことが、本当
に我々の社会にとって有益となるのでしょうか?スケーターの羽生結弦さんが“結婚後
僅か3ヶ月ほどで離婚した”というニュースが世間を驚かせました。その理由が、誹謗中
傷や一部メディアからのストーカー行為、許可のない取材などで妻が家からも出られな
い状況が続き、苦悩の末「お相手に幸せであって欲しい、制限のない幸せでいて欲しい
という思いから」というのですから、何ともやりきれない話(真意のほどは分かりません
が…)です。日本は、ここまで“人の幸せが祝福できない国”になってしまったのでしょう
か。下を向いてトボトボ歩いている子には「下を向いて歩くんじゃない、背筋を伸ばし
て、しっかり前を見て歩きなさい」と叱ります。世知辛い世の中ですが、空手道を学ぶ
者として“自分を信じて前を向いて歩いて行ける人”になっていって欲しいと思います。
自分が幸せではないと、他人の幸せを喜ぶことはできません。
今年も後1ヶ月。16日には審査があります。自分の進歩を「級」という形で見ていけ
るのは、武道の良いところだと思います。1つでも上の級を取得し、黒帯を目指して欲
しいです。

コメントを残す