会報「あすなろ」2025(令和7年)12月号「正義…」
普段ドラマはあまり見ませんが、1つだけはまったドラマがあります。それが水谷豊さん主演の『相棒』です。ストーリーの展開もさることながら、水谷さん演じる「杉下右京」という名刑事と相棒を組む刑事とのやりとりの面白さで、24シリーズまで放映されています。さすがに近年の作を見ますと「水谷さんも相棒の寺脇さんも年を取ったな~」と、公務員という設定にいささか無理(定年退職しないの?) を感じるようになってきました。
このドラマ、とても面白いのですが、時々何かもやもやした納得しがたい気持ちになる『回』があるのです。それが杉下右京が追い続ける『正義』なのです。ある回では、不良グループに、正義感の強い子がリンチを受けています。ところが事故が起こり不良グループのリーダーとリンチを受けていた子が、がれきの下敷きになり火災が発生します。そこに杉下警部が駆けつけ、近くにいた不良を先に助けます。この時の行動の理念は“何人の命も平等”“先に助けられるものから助ける”というものです。ところが、次の子を助けに行こうとしたときには、すでに建物が焼け落ちて、その子は亡くなってしまいます。それから数年、助けられた不良は、さらに『悪の大物』となって犯罪を繰り返していたのです。
またある回では、過去にちょっとした罪を犯してしまったが、現在は平和に暮らしている犯人?を“真実を明らかにすること”という理由で、(本当に悪い奴は、すでに死んでしまっていて、今更過去の小さな犯罪を暴いても、誰も幸せにならない状況でも)杉下右京は、真相を暴くのです。そしてその結果、何事もなく暮らしていた人は、現在の職を失います。
日本は法治国家ですから『法律』を遵守しないといけないことは分かっています。しかし例えば、周囲は田んぼで見通しの良い直線道路、誰も飛び出してこない。そんな道の制限速度が40kmとなっています。そして、その道路脇の建物の陰におまわりさんが隠れていて、スピード違反の取り締まりをやっているのです。その結果、スピードオーバーで捕まり、何万円という罰金を払って、免許が停止された人は「自分が悪かった」とは考えず「何でこんな卑劣な取り締まりをするんだ」としか思わないのではないでしょうか。
「正義」の反対語はと言えば、多くの人が「悪」を思い浮かべるかもしれません。しかし、世界中を見渡してみると(特に宗教がらみの紛争では)、一概に“どちらが正しくて、どちらが悪い”と言い切れない現実があります。どこかで“「正義」の反対は「もう一つの正義」だ”と聞いたことがあります。何が正しいか?という倫理観は、宗教と教育によって作られている気がします。日本人は、昔から『八百万の神(万物に神が宿る)』という発想があり、宗教により定義された道徳観はありませんが、多くの物事を柔軟に受け止めることができている(いろいろなことと調和することができる)ように思います。
試合の前に、(敵に)礼をして始まる日本の武道は、単に相手を傷つけることを目的としていません。自分と、自分の大切なものを守り、心の正義を貫いていくためのものであると思います。日々の稽古の積み重ね、これからも大切にしていきたいです。
今年もあと僅か
私が木更津中央支部の支部長となって13年が過ぎようとしています。当初、大した才能もない私が、空手の指導者としてやっていけるとしたら、どんな道があるだろうか…、と考え、2つの方針を決定しました。1つは、単なるスポーツではなく、武道として取り組むこと。2つ目は、基本を大切にすることです。
これまでの会報で、何度も繰り返してきたことですが、今の空手は、全空連という団体のルールで運営されるスポーツです。スポーツにはスポーツの良いところ、目指すところがありますので、それに関してどうこう言う気はありません。ただ自分の場合“空手道と出合ったお陰で(自分に自信が持てるようになり)人生が豊かになった”という思いがありました。ですから、空手という競技を指導していくなら、できれば自分と同じような思いを共有して欲しいと願いました。ですから道場の方針は、空手(スポーツ)ではなく空手道(武道)なのです。
高校を卒業して、何年かして道場に戻ってくる人がいます。基本をしっかりやっていた人は、自転車に乗れるようになった人が、何年乗っていなくても(体が覚えていて)スッと乗れるのと同じで、あまりブランクを感じさせず、短い時間で復帰を遂げます。ところが組手中心でポイント取りばかりやっていた人は、ほとんど最初からのスタートとなります。地味な取り組みですが、繰り返えしてきた基本は小脳で記憶され、なかなか失われることがありません。私が年を重ねても、大会(マスターズ)で、そこそこの成績を残すことができたのは、地道に基本を続けてきたお陰だと信じています。ですから道場の稽古は、必ず基本をやります。皆それぞれ都合がありますので、時間に遅れることもあると思いますが、個人的には、初めの30分をしっかりやって欲しいと思っています。
これも、ずっと言い続けていることですが、うちの道場は“小中学校在学中にメダルを取ること”を目的としていません。運動神経が鈍いといわれている子でも、しっかりした技術(先人が何年にも渡って、研ぎ澄ませてきた)を身につけ、自分の未知のポテンシャルを手に入れる。そして、社会に出た時に“堂々と胸を張って自分の選んだ道を歩いて行く”ことができることを目指しています。
また新たなる年を迎えますが、来年の全国大会には、多くの仲間と参加したいものです。

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