会報「あすなろ」2026(令和8年)2月号「勝利至上主義+和の心=真の勝利」
昨年11月のはじめ、MLB(大リーグ)のワールドシリーズで、LAドジャースが球団初の連覇を達成しました。ほぼ毎日報じられる3人の日本人の大活躍に、野球にあまり興味のない私でも、スポーツニュースのチェックが日課となっていました。今年も村上選手を初め、何人かの日本人がアメリカに渡り、その活躍が期待されています。
アメリカンドリームという言葉があります。スポーツに限らず、どんな(に貧しい)環境で育った人でも“才能が発揮できれば、巨万の富を得ることができる国”それがアメリカなのです。特にスポーツの世界は、明確な結果がでますから、選手からすれば「他人を蹴落としてでも、自分が這い上がってやる」という意識を持つのが当たり前です。ところが、そんな中に「自分の記録よりも、チームの勝利を優先したい」という選手が登場したのです。ここでホームランを打てば、ヒーローになり、さらに自分の評価が向上する。ただ、そんな場面でホームランを狙えば、三振の確率も高くなる。だから、チームのために、確実にランナーを進めることができる『バント』を選択する。大谷選手は、純粋に野球を愛し、チームの勝利を熱望していました。
初めのうちは「なんで、そんなバカなことをするんだ」という声も上がっていましたが、シーズンが進んでいくうちに“野球は、個人の力だけでは勝てないチームワークのスポーツなんだ”という、日本のアマチュア野球(教育の一環として)では当たり前のような考え方を、本場大リーグの一流選手がするようになりました。ワールドシリーズでは、まさにそんな考え方を持つチームが、お互い助け合って、見事な優勝を勝ち取りました。
日本の紹介映像で、必ずと言っていいほど登場する、渋谷のスクランブル交差点の映像。たくさんの人が、一斉にいろいろな方向から交差点を渡る。「どうしてぶつからないんだ」と、海外の人は思うそうです。駅での整列乗車「どうして日本人は、あんなにお行儀がいいんだ」と半分バカにしたようにつぶやきます。多くの国で、電車に乗ろうとすると、降りる人を待たずに、皆「我先に」とドアに殺到するのだそうです。当然ぶつかり合い、押し合い、怒鳴り声が聞こえてきます。結果、電車の出発は遅れ、予定の時刻に目的地に着けなくなります。日本式の乗車はスムーズで、電車の定時運行に大いに貢献しているのです。
他人の事を、ほんの少し思いやって自分が行動するだけで、どれだけ社会全体が穏やかに、そして平和になるでしょうか。11月のMLBのワールドシリーズは、その事実を、世界中に示してくれたように思います。國際松濤館空手道連盟宗家の金沢先生が、常に言われていた『調和の哲学』というのは、今更ながらに人類全体の平和すら達成できる思想なのだと思います。試合に出れば「勝ちたい」という思いは当然ですが、負けた時でも「相手の選手はもっと努力していたんだ…」と思う人と、「審判のジャッジが間違ってるんだ」と思う人では、心の成長に大きな差が出てくるのです。
稽古でいつも思うのです。「みんながいるから、稽古を続けていけるのだ」と。
ほんのちょっとの、その後
先月、昨年たった一度だけ“会費のお札の向きが揃っていた”という話題を載せました。新しい年になって、最初の会費を集めた時のことです。なんと全ての袋のお札の向きが揃っていました。恐らく、全ての皆さんが“重田がお金を取り出す時、ちょっといい気持ちになるんじゃないか”と、ほんのちょっぴり思いながら、会費を袋に入れてくださったのだと思うのです。そんなことを想像していたら、とても嬉しい気持ちになりました。どんなものでも、きちんと揃っていると気持ちがいいものです。
「最近、道場生の数が増えてきたためか、バッグの置き方や、脱いだ上着の始末が乱雑になっています。神谷先生(現在大阪在住)だったら、きっと怒っているはずです」と、ある保護者の方(Mさん、Oさんありがとうございます)から言われました。本来だらしない性格で片付けが苦手な私は、はっとしました。靴の整頓については、注意していましたが、自分自身のバッグの上にある、脱ぎっぱなしの上着を見て「これではいけない」と思いました。早速みんなに話をすると、次回からきちんとバッグが並べられ、上着もバッグに収納されていました。狭いスペース(本来なら、更衣室のロッカーを利用してもいいのですが、数年前に更衣室で盗難があったということで、目の届く道場内に荷物を置いています)ですが、スッキリ歩きやすくなりました。
中国では、街中の犯罪が減っているそうです。街の至る所に設置された、防犯カメラは24時間(顔認証システムが活用され)監視をしています。デモ活動などに参加すると、あっという間に「どこのだれだれ」と特定されるそうです。政府(共産党)は、恐怖によって人々の犯罪などを防いでいます。一方日本が安全で治安がいいとされるのは「罰せられる」からではなく、人々が相手を思いやる心を持っているからです。ゴミ箱が少なくても街がきれいなのは、多くの人がゴミを持ち帰っているからです。
昨年末「ちょっとだけ」という、会報を書いた頃から、ちょっとだけ意識してやっていることがあります。私の行っているジムには、器具に汗ふき用の小さなタオルが備え付けられています。器具を使用した後、汗を拭かないでいく人、拭いてもタオルを丸めて戻す人、いろいろな人がいます。自分も以前はあまり気にしなかったのですが、昨年後半から“器具の使用後、タオルをきちんとたたんで戻す”ことを始めました。誰かに褒められたい訳ではなく、次に使う人が、(もしかしたら)きちんとたたまれたタオルを見て、ちょっとだけでもいい気持ちになってくれるかもしれない。そう思うと、何となく気分がいいのです。
誰かの喜ぶ姿を思い浮かべて、何らかの行動をする。決して何かの見返りを求めての行動ではありません。それによって、何か自分の心が温かくなるのです。これからもたくさんの人が「ちょっとだけ」を意識した行動ができたら…と思います。

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