会報『あすなろ』2015年4月号
支部長の独り言 『物と体験――与えるべきは…』
人生にはいくつかの壁(ランク)があり、その壁を越える(1階から2階に上がる)ためには、どこかで足を通常の歩行より高く上げる努力が必要となります。このちょっとした努力をしない者は、永遠に1階にある物しか手に入れることができません。
近年、小中学校から不登校、卒業しても引きこもりで、他人とのコミュニケーションが作れない人間が、不満のはけ口に他人を傷つける事件が増加しています。彼らの多くが、自ら高みへ踏み出そうとせず、(努力して上がって行った)2階に住む人間をうらやんだり、ねたんだりしています。先日も淡路島で隣人5人を殺害という事件が起こりました。またイスラム国の影響か「人を殺してみたい」という動機の事件が立て続け起こっています。中学校1年生が、仲間の先輩に無残にも殺された事件も、こういった人の命の重さがわからぬ少年?たちによる犯行でした。
いつも述べるように、幸せな人生を送るために、ある程度の収入、健康な体、そして、現状で幸せを見つける力(これには、困難に立ち向かい乗り越える精神力が必要です)があればいいと思っています。腹のたるんだおじさんが、たった2ヶ月で引き締まったボディを手に入れる。ラ○○ップというジムのCMが流れています。100万近いお金を出すと“2ヶ月で体を見違えるようにしてくれる”といいます。当たり前ですがこの2ヶ月間は、それまで楽をしていた人には、地獄のような特訓が必要だそうです。(それがあまりにきついので、せっかく手に入れたボディは、しばらくするとたるんできてしまうとも聞きました)とにかく、健康な体と精神力は、どんなスポーツでも(頑張ってやれば)手に入れられると思います。しかし近年のように、何の罪もない人間が被害者になってしまうような社会状況を考えると(相手との間合いを意識する)武道を学ぶことは、大きなメリットがあるように思います。保護者のみなさんの中には、我が子に空手を学ばせることによって、2階にある“自分(とその大切な人)を守る力”得させたいと思った方もいらっしゃると思います。ただ当たり前のことですが、どこの空手(道場)だから強い。ということはなく、強い人が強いのであり、強くなるにはどれだけ稽古に打ち込めるか、本人の(足を上に上げようとする)意識によって決まってくるのです。
いつも一番に来て基本からやるI君は、正直運動が得意ではないと思います。階段に踊り場がいっぱいあるようで、なかなか上達が見えませんが、それでも確実に高みに登っているのです。以前に述べたよう、体に覚え込ませるものは人生の早い時期に始めるほど効果があります。しかし小学校の低学年から、TVで紹介された空手少女のように、自分の意志で取り組める子はごくまれだと思います。となると、足を上げ階段を上らせる力は、親の思い、努力・協力が大きいと思います。我が子が『健康な体』『強い精神力』そして『命を守れる技』を少年期に獲得できたとしたら、その子の未来にとってどれだけの宝物を与えられることになるでしょうか。子どもの欲しがる『物』を買い与えることと、子ども時代にかけがえのない体験を与えることと、どちらが有効なお金の使い方でしょうか?
支部長 重田紀元
