会報『あすなろ』2016年4月号

支部長の独り言 『オンリーワン』

「一番じゃなければダメなんですか?二番でもそんなに変わらないじゃないですか?」とは、民主党が政権与党だった時の蓮舫議員が「スーパーコンピューター開発の費用が高い」と事業仕分け会議で発した有名な質問です。「世界最高峰は?」と聞かれれば「エベレスト山」とすぐに答が返ってきます。標高8,848mだって、かなりの人が答えられるかも知れません。しかし、2位のK2、8,611m になれば、知名度はグンと落ちます。まして第3位のカンチェンジュンガ 8,586mになると、ほとんどの人は知らないはずです。

スポーツの世界だって同じです。人類最速と言われるのはウサイン・ボルト。100m走って9秒58です。ところが「では世界歴代2位の記録は?」と聞かれて「9秒69でヨハン・ブレークとタイソン・ゲイです」と答えられる人は、ほとんどいないのではないでしょうか。1位と2位の差はわずか0.11秒、距離にしても1mちょっと、手を伸ばせば背中に触れる程度です。しかし、ウサイン・ボルトと2位の2人の年収・知名度を比較したら桁違いのはずです。マラソンだって、野球だって世界一位とそれ以降のものでは、全く扱いが違うのです。1位というのは今まで誰もが到達したことのないところに辿り着いたということです。だからこそ世界が注目します。誰もが一番の品物を欲しがるからこそ、人は一番を目指すのです。ですから、プロの世界は一番じゃなければならないんです。
しかし、我々はそうではありませんが、スマップによって歌われヒットした“世界に一つだけの花”に象徴されるように「一番じゃなくて、ただ一つ」だから、そのままでいいんだという発想が、安直に用いられ過ぎるようです。
過去に何度か述べたように、今の日本は生活スタイルだけでなく、思想もアメリカナイズされ、自己の権利ばかり主張するようになっています。学校ですら、好きな時間に行って、嫌なことはせず、好きなことだけをやることが許されてしまっています。近年増加している犯罪者のほとんどが『無職』であることと、成長期に、自分の嫌なことから逃げ回り、好きなことしかやらない人間が社会に出て、いろいろなトラブル(以前はトラブルとは思われない程度のもの)に耐えられなくなり、以前では考えられないような動機の犯罪を起こしてしまっていることとは、無関係とは思えません。何の努力もせずに「俺は俺だから」等と甘ったれたことを言っていてはならないのです。生まれながらに持っている資質に、どれだけの努力を加え続けていけるのか。宝石は磨いてカットして初めて宝石としての価値が出てくるのです。人間も同じです。昔の武士がいつ起こるかもわからない戦に備えて、常に鍛錬を怠らなかった心を失ってはならないのです。
稽古開始直後の時間は、ストレッチをメインとした準備体操と基本です。空手は、激しい動きがありますので、準備体操は怪我をしないためにも重要です。また、基本の重要性も何度も述べています。『基本』のような単純な作業の繰り返しは、確かに面白くないですが、心を鍛えるためにも、重要な時間です

支部長 重田紀元

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