会報『あすなろ』2013年5月号

支部長の独り言 『野生動物に学ぶ』

チーター

みなさんは、チーターが全速力で獲物を追って走っている映像を(動物番組やCMで)何回か見たことがあると思います。その地上最速の動物チーターの走る姿と、空手の有段者の組み手や型の演武に、共通点があると言ったら、なんだか分かりますか?
実は、頭の位置があまり動かないことなのです。動物は目や耳といった感覚器官から取り入れた情報を感覚神経を通して脳に伝えます。脳はその情報を判断し、最適な命令を運動神経を通して筋肉に伝え、体を動かしています。このルートをいかに短時間で信号を流していくかが、達人と凡人の分かれ目になります。そして、運動神経から筋肉までの動きには、あまり個人差がないのです。つまり、大きな差が出るのは”情報を収集して判断するまでの間”ということになります。チーターはあれだけの速さで走りながらも、頭を動かさないことによって正確な情報を入れ、それを元に正確な判断をしているのです。もし脳が上下に揺れてしまっていたら、正確な情報・判断が入らないのです。

今道場生にやかましく言っているのが、基本です。あすなろ2号で、武道の素晴らしさは「運動神経が鈍い」といわれる人でも、熱心に続けることにより、必ず「あるレベル」まで到達できること。と紹介しました。あまり大きくなくてもけんかが強い子、をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれませんが、訓練をすることによりある程度は自己流でも強くなります。それはわずかならが運動神経の伝達が改良されるからです。今全く運動能力などが同じA君・B君の二人がいたとします。A君はたまたま右のパンチが得意なことに気がつき、自分で鍛えます。B君は空手を基本に忠実に学びます。初めは人間の自然な動きと違うことが多いので、戸惑うのですが、熱心に続けています。しばらくして…。というのがちょうど今の道場生の実態のような気がします。それは、熱心に頑張ってきたので、試合でもベスト8に入賞することができるようになってきました。しかし、ベスト4になる選手とは大きな差があるのです。場合によっては小学校の低学年でも、優勝する子は、『空手』をやっているのです。背筋がピンと伸びていて頭が安定していて、相手の動きをしっかり見て、捌いて攻撃しています。ちょっと話が飛んでしまったので、A・B君の話に戻しますが、ある時期までは、二人が戦ったらA君の方が強いのです。ところがその後はA君はどんなに頑張っても、それ以上強くなれません。反対にB君は初めは、なかなか強さを実感できないのですが、やがてどんどん強くなっていくのが分かってきます。

実はここのところ、『型』の演武がなかなかうまくならないので、「なぜだろう?」と思っていたのです。ある時、茶帯を着けている子でも基本がしっかりできていない子が多いことに気がつきました。ある意味盲点でした。もう『基本』はできている。とこちらが勝手に思い込んでいた、としか言いようがありません。先に述べた、野生動物が命がけで実行している方法が、科学的にも最も優れた方法なのです。それを人間に応用したのが武道であると思っています。例えば運足です。運足の基本は、頭の位置が上下に移動しないことと、前に出る力を生み出すところにあります。本来の人間の歩き方とは違うのですが、肉食動物は何気なくやっていることです。どんなに強い相手でも、最初に上段の突きがきて、次に中段の突きがくる、という場所と順番が分かれば、捌いて突き返すことは大して難しいことではないはずです。もちろんあくまで理論だけの話ですが。でも試合中も脳の位置を安定させ、最初の情報をうまく処理できるようになれば可能な話です。それには、武道の動き、つまり“空手の基本を学ぶ意義”をみんなが分かっていないと「笛吹けど踊らず」となってしまいます。
しばらく今日明日の一勝より、一年後、二年後の二勝、三勝を目指したいと思います。

支部長 重田紀元

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