支部長挨拶

shigetanorimoto

國際松濤館空手道連盟木更津中央支部 支部長

木更津市スポーツ少年団 本部長

重田 紀元

 

 

 今空手を学ぶことの意味

我が木更津中央支部も名称変更に伴い、私が支部長となって10年が経過し11年目を迎えて

います。令和4年度には、日本スポーツ協会から全国で153名『公認スポーツ指導者等表彰』

受賞の栄誉をいただきました。これも、微力ながら活動している木更津市スポーツ少年団の本

部長として、さらに空手指導者としての長年の活動を評価してくださった方々のお陰であると

思っています。

スポーツ指導者として表彰されながら、個人的にはスポーツではなく『武道』の指導者であ

る(ありたい)、と思っています。スポーツと武道の違いについては、過去何度も述べたことが

あります。スポーツは楽しむためのものです。自分が楽しむ場合と、人を楽しませる場合があ

ります。エンターテインメントとしてのスポーツは一大産業であり、一流のプロ選手の年収は

数十億円にもなります。プロになる可能性がほとんどない大人は、自身の健康のために「楽し

むスポーツ」を実践しています。ところが子どものスポーツは、ちょっと様子が違ってきます。

かつて大金を稼げるスポーツというのは、野球、ゴルフ、サッカー等ほんの数種類しかありま

せんでした。ところが現在は、バスケットボール、バレーボールのみならず、かつては子ども

の遊び道具?であったようなスケートボード、ダンスなどまで多様なスポーツで高収入が期待

できるようになってきています。当然何らかの才能を持つ子の親は、我が子にその道を究めさ

せたいと思うようになります。有名選手を輩出した学校やスポーツクラブは、生徒が殺到し一

流選手養成所となっていきます。一方特別な才能を持たない子は、当然そんな学校やクラブに

は、ついていけませんから、スポーツと縁のない生活を送るのです。

体も小さく小生意気で、少々いじめられっ子タイプであった私は、中学校進学時に「中学に

なったら強くなるために、部活動で柔道か剣道をやろう」と思っていました。入学直前にある

少年雑誌に「剣道は反射神経が良くなり、頭が良くなる」という記事を見て、剣道に決めまし

た。当時の部活動はめちゃくちゃで、意味もなく叩かれたり辛いこともたくさんありました。

3年間部活動を続けたお陰で「剣道初段」を手にしました。その時のことは、はっきり覚えて

います。「強くなったか?」と自問して「全く強くなっていない」と感じたのです。今思えば

剣道は、精神性を重んじるあまり、竹刀は刀ではなくなり、剣道ではなく竹刀道というスポー

ツになっていたたためだと…。それから数年後、ブルースリーの映画が大ヒットしました。

彼の映画を見る度、今度習うならカンフー(空手)という思いは募りました。その思いが叶えら

れたのは、就職した後のことでした。関節が硬く、物覚えの良くない私は5年近くかかって

「空手道初段」を手に入れました。その時「確実に強くなった」と感じました。その後柔道

とも出会い「三段」取得まで続けることができました。

今の時代、何の罪もないのに一方的な逆恨み?を受け殺害される、という事件が多発して

います。ほとんどの被害者が、ほぼ無抵抗でした。抵抗しなかったのではなく、蛇に睨まれ

たカエル、抵抗できなかったのです。全てとは行かないまでも、何件かの事例を見れば、

「もし被害者に、ある程度武道の心得があれば」自分や愛する家族を守れたかもしれない、

と思うのです。

空手も柔道もグローバル化され、武道からスポーツへと変わっていきました。見ている人

が退屈しないように、勝敗がわかりやすいようにと、ルールがどんどん変更されていきまし

た。今国内で行われる空手試合のほとんどが、世界空手道連盟と同じルールで競う、全空連

(全日本空手道連盟)ルールで行われています。全空連ルールは、柔道と同じで、細かくポイン

トが決められていて、最終的にポイントの高い方が勝つ、ポイント取りゲームです。一本を目

指して、精度の高い、威力のある突きや蹴りは必要ないのです。突きは1ポイント、蹴りは

中段2ポイント、上段3ポイントです。運動能力の高い子は、突きで2ポイント失っていても、

顔の近くに足を上げられれば3ポイント、あっという間に逆転です。スポーツですから、ルール

に沿って戦うのが大原則です。ですからルールに従い勝利を目指す。当然のことです。

うちの道場は、どちらかというとあまり運動神経が良くないかな、という感じの子が多いよう

です。基本を大事にして、試合で使わない型なども稽古します。地道な努力によってのみ身につ

くものもあると信じています。かつての私がそうであったように、ひ弱な子が、将来自信を持っ

て学校や社会で、堂々と生きていける力を持てたら、今の時代、目先の試合に勝つより、大きな

ものを手に入れられる気がします。

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