令和6年3月号 うら面「今のスポーツに何を求める」
柔道が世界中に広がっていった時代、パリで柔道の国際会議があったそうです。
日本の代表はパリ見物に夢中で、会議の開始時刻に遅れてしまったそうです。
日本代表は「本家の自分たちが行かなければ、会議は始まらないだろう」と
思っていたそうですが、会議は予定通り始まり、日本の発言権は大きく失わ
れることになりました。それ以後柔道は、日本のお家芸ではなくなり、一層
スポーツ化が進むこととなったそうです。この話の真偽は分かりませんが、
日本と外国の考え方の違いを良く表していると思います。
日本は伝統文化をとても大切にします。運動競技でも、相撲のルールはほ
とんど変わらず、今後もそれは続いていくと思われます。しかし空手や柔道
は、次々とルールが変更されています。それは、競技のグローバル化による
ところが大きいのです。世界中で競技人口が増加していくと、そこから利益
を得ようとする人(組織)が現れてきます。そのためには競技が面白いこと、
わかりやすいことが必須となります。以前も述べましたが、空手や柔道での
試合で、お互いが見合って動かない(動けない)時があります。相撲に親しみ
のある日本人は、その動かない時間の見えない攻防を楽しめるのですが、世
界の多くの人は「早く攻めろよ、面白くないな~」と感じるのです。そのた
め、多くのスポーツで『時短』が求められ、攻撃しない無駄?な時間にはペ
ナルティーが与えられる傾向(大リーグでもピッチクロック制度が導入)にな
っています。
いかに日本発祥の武道であっても、世界に広まった競技は、すでに日本の
競技ではないのです。相撲同様海外進出に積極的でない?競技に『剣道』が
あります。剣道が世界中に広がっていかない理由の1つに「わかりづらさ」
があります。触れれば切れる『剣』を謳いながら「面~」と打撃しても
「不十分」と審判の旗は上がりません。私も中学校時代に剣道をやっていま
したが、初めの頃は「なぜあの打撃が一本にならないの…」と思っていまし
た。何ヶ月か経って「気剣体一致」でないから…、と分かるようになりまし
た。しかし、剣道を知らない人たちからすれば、刀で脳天をかち割られて不
十分、は理解できません。刀という武器を持った戦いなのに、刀で切られて?
も勝敗がつかない複雑さは、剣道が世界中に広まっていったら、真っ先に
ルール改定により解決されてしまうはずです。
空手もWKFの元で完全にスポーツとなり、見た目に派手で分かりやすい
上段蹴りは、中段突きの3倍の3ポイント、などと多くのポイントを取った
方が勝つシステム。勝敗が何より大切なので、なるべく引き分けがでないよ
うに「先取(同点なら先にポイントを取った方が勝ち)」などのルールがどん
どん加えられ、突きの先が見えなくても審判の旗が上がってしまうなど、
選手のことより見ている観客優先のルール。またそのルールの中で、自分の
選手を勝たせようと躍起になる指導者。空手を学ぶことで、何を得ていくの
かは、修行している人が見出せば良いのかもしれませんが…。
我が道場では、7時半までは基本稽古。しっかりとした空手の土台作りのた
め、これは欠かさず続けていこうと思っています。
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