会報「あすなろ」2024(令和6年)年3月号「松濤館の型」

さんもご存じのように空手には、戦いを想定し1人で演武する『型』と、

戦いをルール化した『組手』の2種目があります。國際松濤館(SKIF)には

26種の型があり、初めに習う平安が初段から五段までの5つ。以前は平安

を習う前に、平安初段の簡略型の太極初段を教えていたこともありますが、

最近はほとんどやっていません。平安を覚えると、鉄騎初段(鉄騎は三段まで

あります)。鉄騎を覚えるとSKIFの選定型である慈恩・燕飛・観空大・抜塞大・

十手の5つに進みます。観空と抜塞は、それぞれ大小2つの型があります。

黒帯になる頃には、選定型がほぼできるようになっています。型は、他の流

派では『形』と表記される場合が多いですが、我がSKIFは「まずは、決めら

れた型通りに動けることが大切」と「基本通りの動きを寸分違わずできるよう

に修練する」という願いを持って型(金属を流し込む鋳型の型)の表記を使って

います。

一方組手は、ある意味わかりやすいです。流派による違いはほとんどなく、

手や足といった体の部位を使って相手との攻防を行うのです。ただし、人間に

は『急所』と呼ばれる部分があり、そこへの強い打撃は命に関わってきます。

そこで『安全』を担保するものとして、防具やルールが必要となってきます。

この防具やルールは、何度も会報で述べているように、世界空手連盟(WKF)が

決めたもの(観客を満足させるため、何度もルールが改定されている)を、全日

本空手道連盟(JKF)は、何の反論もせず、ただ言われるがままに追随しています。

ただ、あまり差がないとはいえ、違う流派同士で戦うときには、やはり共通の

ルールが必要となりますから、今の多くの大会はJKFのルールで行われていて、

SKIFが主催する大会以外に参加するには、JKF指定の防具を用意する必要があり

ます。日本では昔から、武道や茶道などで、修業における段階を「守破離」とい

う言葉が使われています。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、

確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良い

ものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、1つの流派から離れ、独自

の新しいものを生み出し確立させる段階です。SKIFでは、最初の守の部分を特に

大切にして稽古している訳です。私がいつも道場生に言うことは“基本を大切にす

ること”“型はかっこよく演武すること”の2つです。基本で大切にしていること

“常に上の目標を持って稽古すること”です。一見単純な動作の繰り返しで、1年

もしないうちに「そんなのできるよ~」となりやすいですが、人間「できた」と

思った瞬間から『上達』しなくなります。空手の足の運び(運足)一つ取ってみて

も、まず基本通りに “前足を動かさず、後ろ足の踵を上げず、円運動で動かし

着地と同時に、後になった足が斜めに開く”ができるようになる。それが自然に

できるようになったら、徐々にスピードを上げていく。これに受け・突きや蹴り

の動作が加わります。自分でできたつもりになる道場生が多いのですが、これ

がなかなか習得に時間がかかるのです。松濤館の型は、雄大で力強い型が多いで

す。型を演武する人は、複数の敵をバッタバッタと倒す暴れん坊将軍(ちょっと

古いでしょうか?)のようなヒーローです。ですから型を演ずるときは、自分自

身が「かっこいい」と思えるような美しさを目指す必要があるのです。それが意

識できると「風が吹けば…」ではないですが、普段の姿勢も良くなり、酸素の吸

収量も増えてきて、血の巡りも良くなります。型を一生懸命稽古することで、組

手の技術もアップします。地道に稽古に励みましょう。

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